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Uchino Lifestyle Designing タオルの内野 - 内野株式会社

会社情報

[繊研新聞]2011年1月6日(木)掲載記事

欧州市場開拓でグローバル企業へ

繊研新聞記事掲載内野にとって欧州市場開拓はアジアや米国市場へと続くグローバル戦略のゲートウエーだ。
08年からパリの生活用品総合見本市、メゾン・エ・オブジェ展に出展し、現在20カ国、62社に商品を供給。パリのボンマルシェやボッフィなど百貨店や高級専門店に販路を広げてきた。中国ではすでに200超の百貨店に「ウチノ・バス・デザインズ」を出店しているが「欧州で認められることが他地域のビジネスも加速させる」と言う。
タオル発祥の地でバスタイムのライフスタイルを提案。内野は新たな成長戦略を描く。

欧州でのタオルの常識を破る

中国に加えて、欧州市場でも着実に卸し先を広げている。

中国では上海の直営店をはじめとして、代理店が運営するショップなど、中国の百貨店に出店するウチノ・バス・デザインズは200店舗を超え、現在、急ピッチで売り上げを伸ばしています。今後も百貨店を中心に400店舗まで拡大していく予定です。

欧州市場に本格的に取り組んだのは08年からです。リーマンショック直後にパリのメゾン・エ・オブジェ展に初出展しました。世界的な不況の中で本当に実力がないとビジネスはうまくいかないだろうと考えていましたが、年2回の出展で20カ国62社へと取引先が拡大しました。

心強いのは1回の取引で終わった企業は一つもないこと。すべての企業がリピートオーダーしてくれました。とくにフランスとイタリアが圧倒的に強く、この2カ国で30社と取引しています。ファッションに敏感な国の売り場に支持されたということが自信につながりました。

パリのボンマルシェはタオルの自主編集売り場の大半が弊社の商品です。パリのある売り場からは「バケーションから帰ってきたらストックが空になっていた」という話も聞きました。現在の年間売り上げは約5000万円。来年は1億円を目標にしています。

タオル発祥の地である欧州で受け入れられた一番の理由は。

彼らのタオルに対する常識を打ち破ったことです。欧州では分厚くて、重いタオルが高級とされてきました。そこに軽くて、柔らかい素材を持ち込みました。「TECHNOLOGY・ECOLOGY・LUXURY」をテーマに、極限まで柔らかさと軽さ、肌触りの良さを追求したマシュマロタッチのタオルやガーゼ、ワッフルなどの素材を開発しました。

当社は独自の糸を開発し、特殊な織り組織を生み出して欧州にはないタオルを提案しました。一昨年は、パリのインテリア雑誌がホームテキスタイル分野でその年の一番魅力的な商品を選ぶ「ル・デクベール賞」を頂いたことでも注目されました。バイヤーたちには軽くて、柔らかくても上質であるということはすぐに分かります。それは売り場でも同じで、ハイエンドな顧客を対象にしている売り場でもお客様は商品の良さをすぐに理解して購買につながったのだと思います。

高級ゾーンを狙った。

価格もバスタオルなどで50ユーロ以上の商品ですから、当然、上顧客をもつ百貨店や専門店を狙っていきました。価格も高いし、市場を広げていくにはハイエンドな顧客層だと思っていました。

しかし、この9月、初めて取引をしたイタリアで約20店舗を出店する「コイン」から「発売1週間で内野のタオルが一番になった」と連絡がありました。OEM(相手先ブランドによる生産)で約2万枚を納入したのですが、すぐに1万枚の追加オーダーをいただきました。ハイエンドな消費者ばかりではない幅広い層の支持を得たことは私にはうれしい衝撃でした。

また、ミラノのディエイチ・コルソコモが開いたホテルにも採用されたことも意外でした。私も滞在しましたが、そこで感じたのはホテルのタオルが変わっていくということです。ホテルのリネンサプライは耐久性が重要視されてきましたが、耐久性が多少劣っていても宿泊客に心地良さを感じてもらうことが満足度を高めていく。タオルがホテルのグレードを左右していく時代がやってくることを実感しました。

「厚いのが高級品」という長年続いてきた欧州の考え方が大きく変化しているということでしょう。ビジネスはまだまだ拡大できる可能性を秘めています。

すべては「タッチ」から始まった

生活用品は欧州市場でのビジネスが難しい。

欧州にはない珍しい商品を提案すれば、見本市では注目されるのはわかっていました。大事なのは、品質や価格なども含めて欧州の人々のライフスタイルの中に入っていけるかどうか。それが鍵だと思っていました。

欧州市場を攻めるきっかけは。

六本木ヒルズに出店した「タッチ」は8年間、ずっと売り上げを伸ばしています。私は、今後のタオル市場は基本的には素材が左右する、生活者は柄やデザイン、ブランドで選ぶのではなく、素材の良さや使い勝手で選ばれるようになると考えました。

タッチではタオルの素材、品質を追求した商品、そして「禅」のコンセプトを取り入れて、癒やしのバスタイムというライフスタイル提案を打ち出しました。この二つの考え方を融合したことで、日本人だけではなく、日本で暮らす海外の方々がリピーターとなってくれました。

彼らは普段使うもの、使用頻度の高いものにお金を遣います。よりメンタルな意味での快適さを求める志向をもつ若い人たちが増えてきています。外国人に人気がある。日本の若い世代に人気がある。これは海外でやっていけるという手応えを感じました。

タッチの成功が欧州市場への挑戦を決心させた。

欧州市場に限れば、やはり「タッチ」の成功がすべての始まりと言えるでしょう。当社は、世界に通じる歴史はもっていません。あるのは技術と発想、そしてそれを具体化する商品開発力です。どこにもないタオル素材を生み出し、そして快適なバスタイムを提案することに注力したことが欧州で認められ始めたと思っています。

1993年に設立した上海工場も大きな役割を果たした。

綿花を吟味し、紡績から一貫して生産していることが当社の強みです。出来合いの糸を買って生産しているわけではない。独自の糸を開発し、特殊な織り組織の研究を重ねていったことで、世界中のどのメーカーもまねできない素材を開発することができます。

私が紡績にこだわったのは、海外の原料産地や工場を視察していくなかで、タオルにとって最も重要なのは糸であるという確信をもったからです。中国は世界最高クラスの新疆綿など、良質な綿の産地です。その産地で物づくりをすることが一番いい。当社は日本の企業で唯一紡績からの一貫生産ができる会社です。それが結果としてタオル先進国の欧米で認められるベースになりました。

日本製でなくても、日本人の技術です。

海外でもメード・イン・ジャパンは高い評価を得ています。それが日本製品の信頼の証しにもなっているでしょう。しかし、今の時代、日本製というだけで評価されると考えるのは間違いです。私は、最適な生産背景の中で日本人の技術が生み出す本当に上質な商品こそが世界で認められると確信しています。メード・イン・ジャパンだけではありません。今は「メード・バイ・ジャパン」が世界に発信できる物づくり、ビジネスとして日本の商品を認めてもらうポイントだと思っています。

欧州での拡大がもたらすものは。

今、アメリカの大手有力小売店からもオファーがあります。でもまずはタオルの本場である欧州の生活者に「内野=品質ブランド」というイメージを確立していきたい。フランスやイタリアを中心に欧州で信頼されるブランドになれば、アジアやアメリカなど他の地域を本格的に攻めるときにもプラスに働いていくと思っています。


[うちの・のぶゆき]

1953年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、米国に留学し、78年日本信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)に入社。80年に内野に入社し、斬新なアイデアでヒット商品を次々に開発する。94年に代表取締役。バスタイムのライフスタイル提案型ショップ開発を目指し、「ウチノ・タオルギャラリー」や「ザ・ボディ&バスショップ」「タッチ」を出店。実践型マーケティング手法で商品開発や百貨店などへの売り場提案を行ってきた。

[記者メモ]

90年代以降、内野が新業態を出店するたびに「直営店の多店舗展開は?」という質問をぶつけてきた。当時、ファッションではSPA(製造小売業)が急成長し、インテリアや雑貨でもSPAを志向する企業が増えていたたが、「あくまでもマーケティングが目的。百貨店などの売り場にフィードバックしていく」と、内野社長は繰り返してきた。

小売りノウハウを自社に積み上げていくことで、売り場表現やアイテム開発など、よりリアルな情報を取引先の売り場に提案していくという姿勢を貫いてきた。慎重すぎるようにも思えたが、それがタオル開発メーカーとしての矜持(きょうじ)だったのだろう。

独自の素材開発から生産、生活者と向き合うアンテナショップを一体として機能させていくことが同社の強みだ。「タオル素材で世界一になりたい」という思いは、これまでの経験値から生まれてきた。欧米市場へのチャレンジは内野社長が立てた仮説の証明でもある。(村上洋一氏)

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