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Uchino Lifestyle Designing タオルの内野 - 内野株式会社

お知らせ・トピックス

今治タオル報道について

報道番組 「存亡の危機から奇跡の復活!タオル産地・今治の挑戦」に対する当社見解

ある報道番組において「存亡の危機からの奇跡の復活! タオル産地・今治の挑戦」という特集が放映されました。この報道は「復興に賭ける産地の取り組み」を取材したもので、主旨については大変興味深く理解できますが、産地や製品の優位性を強調するあまり、公平性に欠ける内容が多く、見受けられました。

今治産地のいくつかの工場が、高い技術で優れた品質のタオルを作っていることは事実です。当社においても今治産地で生産されたタオルを扱っております。しかし、国産タオルの約半分を生産する大阪地区(泉州)においても同等の品質のタオルが作られていることや、海外にも優れた品質を誇る工場が多くあることもまた事実です。これらのことについて一切触れずに今治産地だけを取り上げることは、非常に一方的で偏ったものであると言わざるを得ません。

タオルは工業製品であるため、工場の所在地の優位性は特にありません。タオルの品質を左右するのは、高い技術と優れた設備、徹底した生産管理です。この条件を十分に満たした工場であれば、国内外を問わず高品質のタオルを作ることができます。 今回の報道では、世の中に広くタオルについて知ってもらう良い機会だった反面、消費者に誤った認識や不利益をもたらしてしまう可能性があることに対し、強く懸念しています。

また、店頭においても今治タオルの説明として、“独自の基準に合格した、最高品質のタオル”というような説明が見受けられますが、基準そのものは検査協会が指標として示している品質基準や大型小売店などがそれぞれ定めている品質基準と同等の内容であり、業界としてはごく一般的な水準であると考えられ、それをもって最高品質ということはできず、むしろ最低限のレベルを確保しているとみるのが妥当であると思われます。

内野は今後も国内外の生産地にこだわらず価格、品質ともに、より良いタオルをお客様にお届けしたい。そのためにも、お客様には正しい情報をもとに、ご自分にとって最良のタオルをお選びいただきたいと考えています。

1)”今治タオル報道”全般について 2) 中国製タオルに関する部分 3) 今治タオルの品質に関する部分 4) 今治タオルの吸水性に関する部分 5) タオルの後処理に関する部分

報道番組 「存亡の危機から奇跡の復活!タオル産地・今治の挑戦」に対する当社見解(詳細)

1) “今治タオル報道”全般について

この報道は「復興に賭ける産地の取り組み」を取材したものであり、主旨については理解出来ますが、産地や製品の優位性を強調するあまり、全体的に偏った内容になっており、公平性に欠けるものであると感じられました。

特に、中国から輸入されるタオルは「価格が安い」という点だけが強調されている部分や、今治タオルは「柔軟剤を使用していないため吸水性が良い」と表現されている部分などは、お客様の誤解を招き、誤った方向に導いてしまう可能性があると考えられます。また「1回洗濯後も認める」という特例事項が付帯し、実際にはそれほど厳しいものではない吸水性の基準を「5秒ルール」と称してその一面だけを強調し、それ以外の点については客観的な情報を明らかにしないまま「高品質」と断定していることや、国産タオルの約半分を生産し、品質面においても今治産地と遜色ないと言われている、大阪産地(泉州)については全く触れずに、今治製の優位性だけを強調している点にも疑問を感じました。

タオルは工業製品であり、農作物や畜産物のように、産地の気候風土が品質に影響を与えることは基本的にないと考えられます。特に日本国内の産地においては、主原料である綿花はほぼ100%綿産国から輸入し、水はほとんどの場合、工業用水と地下水を併用しています。日本のタオル製造工程においては、水は一定の条件に調整してから使用するため、水質が品質を高めることもありません。タオルの品質を左右するのは技術と設備、生産管理であり、これはどこで作られたものであれ、基本的には変わらないと考えられます。

タオルはこのような製品であるからこそ「品質の良いものを安く(適正価格で)供給する」ということを考えた場合、より原料の産地に近い場所、より人件費の安い場所で一貫生産することが合理的であり、これは世界的にも大きな流れとなっております。現在では、世界最大のタオル産地である中国山東省をはじめ、インド、ベトナム、タイなどにも日本や欧米向けの高品質なタオルを生産している工場がいくつもあり、今治産地の企業でさえも何社かが中国に進出し、日本向けのタオルを生産しています。

今治産地のいくつかの工場が高い技術で優れた品質のタオルを作っていることは事実ですが、先に挙げたような事実があるにもかかわらず、一部の情報だけをもって産地全体が高品質なタオルを生産しているような印象を与えるこの報道は、公平性に欠け、不適切なものであると考えられます。

※以下は、実際に報道された内容から抜粋したナレーションの内容と、それに対する見解になります。
2)中国製タオルに関する部分

<報道の内容>
中国から怒涛のように押し寄せる安い輸入タオル。これまでのタオル市場は一変した。

=タオル輸入業者の方のお話し=
・「こちらが中国から入れたタオルを今保管しているところです。今25万枚保管しています。多いときは20万枚1ヶ月に出ますので。」
・ここに集められた輸入タオルは全国700店舗もの¥100ショップに。
・年間出荷量は200万枚。年々その数を増している。
・一方、今治のタオル生産量はピーク時の5分の1にまで減少。輸入タオルはついに国内消費の8割を超えた。
・今治のタオル産業は存亡の危機に立たされた。

<当社の見解>
中国から輸入されるタオルは、¥100ショップに代表される「低価格商品」ばかりであるかのような、誤解を招く表現であると考えられます。安いタオルが大量に輸入されているという事実はありますが、中国には日本と同等またはそれ以上の設備や技術を持った工場がいくつもあり、高品質な製品も多く生産されています。中国に代表される輸入タオルが、国内消費において圧倒的なシェアを占めている理由は、単に価格が安いからではなく「国産に匹敵する品質で低価格」であり「国産と同じ価格でより高品質」であったからと考えられます。

3)今治タオルの品質に関する部分

<報道の内容>
・今治タオルの最大の売り、それは品質の高さ。
・消費者にそれをアピールするため、新たに独自の品質基準を導入した。
・その1つが5秒ルールだ。タオルを水面に落としてから、5秒以内に沈まないものは不合格、5秒以内に沈む、極めて吸水の高いタオルのみ今治タオルとして認定。
・厳しいテスト全てに合格したものにだけに、ブランドマークの称号を与えた。

<当社の見解>
今治タオルの「5秒ルール」には、「5秒で沈降しない時は、家庭用洗濯を1回行った後に5秒以内で沈降すること」という特例があり、実際には基準としてそれほど厳しいものではありません。また「5秒ルール」以外の品質基準は、検査協会が指標として示している品質基準や大型小売店などがそれぞれ定めている品質基準と同等の内容であり、業界としてはごく一般的な水準であると考えられます。さらに、検査協会や業界で一般に用いられる品質基準とは「品質の最低水準を保証するもの」であり、高品質、高性能であることを示すためのものではありません。

課されている基準値が業界標準と同等である以上「今治タオル独自の品質基準」を満たすことは「少なくとも業界の一般的な最低水準を上回る品質」というだけの意味しかなく、それだけでは高品質である根拠になり得ないと考えられます。

4)今治タオルの吸水性に関する部分

<報道の内容>
=お客様と今治タオルショップ店員の方の会話=
・「あの、両方タオルをちょっと触ってみた感触で、どちらが柔らかいですか?」
・「こっちが柔らかいです」
・「こちらが柔らかいですかね?」
・「ちょっと実験してみます。宜しいですかね?水をここに落としてみるんですけど...」
・「すごく違いがあると思うんですけど...」
・「後から柔軟剤で柔らかく仕上げた、こう、何て言うんですか?こう包まれたようなものを店頭に並べて売ってると言うことなんですけど、やっぱりしっかりした素材のものを、お使い頂きたいということで、今治タオルのマークが出来た....」
・柔らかいが、水を弾いたのは柔軟剤を使用したタオル。
・柔軟剤はタオルの繊維を柔らかくする半面、水を吸収しにくくしてしまう。
・一方、水をすぐ吸い込んだ方が、柔軟剤を必要としない今治タオルだ。

<当社の見解>
「柔軟剤を必要としない今治タオル」と表現されていますが、実際には柔軟剤を使用している商品も多くあると言われています。「今治タオルの一部には、柔軟剤が使用されていない商品がある」という表現が適切であると考えられます。また、工業用の柔軟剤は必ずしも吸水性を阻害するものではなく、商品の目的や製造工程、流通、販売形態によっては必要とされ、実際に多く製品に使用されております。

さらに、柔軟剤を使用したタオルとの比較が行われておりますが、ここで行われているような高い位置から水を注ぐ方法では、落下する勢いで水がタオルの中に入ってしまうため、多少吸水性が低いものでも吸水性が高く見えてしまいます。このような方法で吸水性の違いを表現することは不適切であると考えられます。

5)タオルの後処理に関する部分

<報道の内容>
・一見、何の変哲もないタオル。しかしこれは、昨年度、究極の肌触りをデザインしたことが評価され、グッドデザイン賞を受賞した今治タオルだ。
・このタオルを開発した田中社長。柔軟剤を使用しなくても柔らかく肌触りの良い生地を作るため、織り方に工夫を凝らした。
・生地の表面部分にある、パイルと呼ばれる糸の輪の長さを、0.1mm単位まで調整して織ることで、きめ細やかな生地に仕上げ、柔らかさと吸水性を両立させた。
・さらに、これまであまり注意が払われなかった、仕上の工程にも徹底的にこだわった。


=今治タオル工場の方のお話し=
・「湯気、見えますかね?温度も非常に上げて、長い時間をかけて、ぐるぐるぐるぐる回して丁寧に洗っています。ですから、手間もコストも時間も掛かりますけれども、この方が風合いの良い、肌触りの良いタオルができるのには適してるわけです。洗いあがったものというのは、シワも無いですし、パイルのループ自体もふんわりしていてつぶれていない、そういうタオルが出来上がります。」
・「従来、タオルというのは、こういう、まあ、謂わば釜のようなものにぎゅっと押し込んで、圧力をかけて洗ったり染めたりしてたんですね。これをやるのはすごく効率は良いんですけれども、タオルの表面にある、タオルの大事な部分、パイルと呼ばれるループの部分ですね、ここまでぎゅっと押さえ込まれてしまって、風合いが非常に悪くなっちゃうと、こういう問題点があったんです。」
・その際、生地に強い圧力をかけるため、タオルの表面にある、パイルと呼ばれる糸の輪の部分が押しつぶされ、シワとなり、ふんわり感が失われてしまっていた。
・そのため、新たな機械を導入したのだ。

<当社の見解>
「従来の洗浄方法、機械ではタオルの風合いが悪いため、風合いの良くなる新しい機械を導入した」という内容の説明がされていますが、中国をはじめとする多くの産地や工場では、以前からこの「新たな機械」と呼ばれるタイプが一般的に使用されており、逆に生地に圧力をかけるような機械はあまり使われておりません。一般的でない洗浄方法を「通常」と表現するのは不適切であると考えられます。あたかも時間と手間をかけて肌触りを良く仕上ているかのように聞こえますが、これはタオルの一般的な工程であり、特別なことは何もありません。

確かに一部の粗悪なタオルの中には、この工程を簡略化してコストを下げているものもありますが、そのようなものと比較すること自体に無理があると考えられます。


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